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アートへの入り口

芸術に興味を持ったきっかけは読売新聞だったと思う。

元旦に届く新聞は、いつもの倍以上の量があって小さな新聞がいくつも届くみたいな感じだった。テレビ欄と芸能関係の新聞、時々を振り返り今年の展望の記事と有名人の対談形式の記事とか。

その中に美術関係の新聞(というか冊子?大きさ・形式は新聞と同じ)があって高松宮殿下記念世界文化賞だかなんかの受賞作品が紹介されていました。

それを眺めていると面白くて。

その中でも印象に残っているのが横溝静さんの作品。

タイトルは「Stranger」。

 

”見知らぬ人の家に匿名の手紙を投函して夜間の定刻に窓の前に立つように依頼し、それを窓の外から撮影したシリーズ。撮影はベルリン・ロンドン・ニューヨーク・パリ・ストックホルム・広島の6都市で行われ、受け取った人がプロジェクトへの参加に承諾した場合、参加者は定められた時刻に部屋の全ての照明をつけていつもの格好で窓辺にただ立つという手紙のルールに従い、窓の外に現れる作家によって撮影された。作家は参加者を外から撮影してそのまま去り、撮影者と被写体とは視線を交わしながらも一切の会話を持たないままに作品は完結する。作家が指定した時間帯は常に夕刻から夜間で、部屋に明かりが灯ると窓を通して参加者の私的な空間が現れる。手紙には、撮影に参加したくない場合、作家が窓の前に訪れてもカーテンを閉めて拒否の意思表示ができるよう書かれてあり、実際に撮影が叶ったのは限られた数であった。作品の中では視線を交わしながらも見知らぬままの2人が、撮影という行為に加担しあっている。”

 

リンク先から作品が見られます。

新聞でもこの経緯は書かれてあってそのやりとりがとても面白いと思いました。面白いというか静かな中にも何か「やってやろう」という決意というものが両者に無いと成立しない。お願いされた人が「面白そう」とか「それじゃあ協力してみよう」とか思わないとできない。今ではおそらく不気味がって誰も了承しないかもしれない。

新聞の記事を見た後、何年かしてサントリーミュージアムがまだあったとき「インシデンタルアフェアーズ」という現代美術の企画展を見に行った。そこにこの「Strenger」もあって間近に見られてとても嬉しかった。あの企画は良かったなあ。とても面白かった。

宮島達男さんの「MEGA DEATH」も良かった。大きな部屋に無数の7セグメントLED(デジタル数字を表現するあれ)が埋め込まれていて、数字がカウントダウンしていく。その数字が変わるスピードは様々でゼロになると消える。何分か待っていると全てのLEDが一斉に消えて真っ暗闇になります。これがとても面白い。数字がまだ8とかでも次の瞬間に消えちゃう。作品のタイトルから命、寿命というものを連想するし暗闇は滅亡を連想してしまう。それを部屋の中で体験できる。まさにアートでした。

今日、その時の図録を本棚から久しぶりに取り出してページをめくっていて思い出したので書きました。